深津です。

いつもご覧頂きまして
ありがとうございます。

守秘義務の都合で
ウェブサイトなどで
おおっぴらに書けない仕事も
多々あるわけですが、

今日はちょっと
現在進行中の仕事に関連して、
よその建築士や施工業者について
思ったことを書きます。

その仕事のクライアントさんは
調理師さん。

長いこと修行を積んで
初めての独立開業を目指して
いらっしゃいます。

良さそうなテナントが
見つかったのですが、

そのテナントの
もともとの用途
「物販店舗」。

一般的に、
「物販店舗」から
「飲食店」という用途に
用途変更する場合、

気をつけなくては
いけないことがあります。

 

新築当時の手続き1つで、改修ができなくなる!?

 

今回のように
既存のテナントを
用途変更』して使おうとする場合、

確認申請』という
行政への手続きが必要となることが
あります。

そのためには、

新築当時の『確認申請』にかかる書類、
すなわち

・確認申請書
・その添付図面
・確認済証
・完了検査済証

が残っていることが
とても重要です。

これらがないと、
行政への手続きを
受け付けてもらえない
場合があるのです。

 

そもそも確認申請って何?

 

建物を新築するときの
行政手続きを
簡単に言うと、
こんな感じです。

まず、

「こんな建物つくりたいけど
いいですか?」

と、役所に聞くのが
確認申請』の手続きです。
その際に

・確認申請書
・その添付図面

を提出します。

すると役所は
それらをチェックして、
問題なければ

「建てていいですよ〜」

と認めて
確認済証
を発行してくれます。

これをもらうと、
新築工事の着工ができます。

そして、新築工事が無事に済み

「確認申請したとおりの建物が
できましたので
チェックしてくださ〜い」

と、役所に検査してもらうのが
完了検査』です。

役所は、完了検査を行うと
完了検査済証
を発行してくれます。

そして、のちのち
増築、改築、用途変更など
『確認申請』が必要な行為を
行う時に、

これらの新築当時の
・確認申請書
・その添付図面
・確認済証
・完了検査済証

があるかどうかが
重要になってくるわけです。

 

完了検査を受けていないせいで・・・

残念ながら、
数十年前の建物では

完了検査を受けていない建物が
実に多いです。

なぜかというと、

確認申請時から
ちょっとでも変更されている
完了検査の前に
変更申請が必要になるため、

施工者や設計者が
面倒くさがって
手続きをしたがらなかったり、

そもそも
完了検査自体にも
費用がかかるからです。

新築時そのままの状態で
とり壊すまでずっと使うなら
それでも問題ない、
という場合も多いですが、

途中で

「増築したい」
「間取りを変えたい」
「窓の位置や大きさを変えたい」
「用途を変えたい」

といったニーズが発生したときに
完了検査」を受けていないと
不都合が生じます。

増築、改築、用途変更などで
確認申請」の手続きが
必要となる場合、

その提出時の要件として
「前回、完了検査済みであること」
が求められるからです。

このため、
昔の建物をリノベーションして
使おうとする場合などでは、

「確認申請」を出したくても、
役所に受け付けてもらえない
場合があるのです。

じゃぁ、
遅ればせながら
「完了検査」を受けてもらえないの?

という発想になると思いますが、

完了検査を申請する期限については
建築基準法第7条

「工事が完了した日から四日以内
建築主事に到達するように、
しなければならない。」

と決められています。

つまり、それを逃したら
2度とチャンスはないのです。

「ただし、申請をしなかつたことについて
国土交通省令で定める
やむを得ない理由があるときは、
この限りでない。」

という例外規定もありますが、
これは災害などで
手続きができなかった場合を
想定していますので、

新築時の施工者や設計者が
完了検査の申請を
「故意に行わなかった場合」は、

「やむを得ない理由」には
ならないのです。

 

あとあと困る理由

たとえば、
「増築したい」
という場合、

既存建物が
建築面積および延べ面積の上限に
余裕を残している場合に限り、

防火地域・準防火地域外であれば
10平米の増築までは
確認申請が不要ですが、

防火地域・準防火地域のであれば
たとえ0.1平米の増築でも
確認申請は必要となります。

* * *

「間取りを変えたい」
「窓の位置や大きさを変えたい」

という場合、
間取りの変更に伴って

構造耐力上主要な部分
(柱、梁、床、壁など)

をいじる必要があると、
確認申請が必要となる場合があります。

その場合は
新築時の完了検査を受けて
いることはもちろん、

構造計算をやり直して
間取り変更後も強度上問題ないことを
証明する必要があります。

このときは、
新築時の構造図面が残っていないと
困ったことになります。

壁や天井を剥がして調査し、
構造をすべて図面化しないと
いけなくなり、
新築時よりおおごとになります。

* * *

そして、
「用途を変えたい」
という場合、

もとの用途
変更後の用途によって
確認申請の要否が異なります。

また、同じ用途変更でも
変更する面積によっても
確認申請の要否が異なります。

* * *

これらのように、
確認申請が必要となる項目は
意外と多いので、

新築時の完了検査を
受けているか、いないかで

改修時に
手続きすればできるはずのこと
できなくなる場合があるのです。

 

どうやって調べるの?

そこで今回の場合。
そのテナントのオーナーさんに

新築当時の
確認済証や、完了検査済証は
保管されてますか?

と聞いてみたところ、

施工者からそんなものを
もらった記憶がない

とおっしゃるので、

こうこうこんな
体裁のはずなんですが・・・

と説明して
探してもらいましたが
やはり、無いとのこと。

で、ダメもとで
新築時の施工者
聞いてもらったところ

「渡したはずですよ?」

と言われたそうです。

そして、
新築時の設計者にも
聞いてもらったところ、

「建物オーナーとは
直接契約したのではなく、
施工者と契約した。

施工者との契約は
確認申請を通すところまで。
だからそれ以後のことは
わからない。

おそらく
完了検査は受けていないのではないか。」

と回答をもらったそうです。

そこで、
私が役所に出向いて
台帳記載事項を調べたところ、

うすうす予想していた通り
完了検査は
受けていない建物であると
判明しました。

新築時の施工者は
そもそも完了検査を受けていないのに
その書類も「渡したはず」
言っているし、

新築時の設計者も
まるで「ひとごと」のように
確認申請の手続きまでしか
契約してないから
あとは知らない、というスタンス。

責任逃れ。無責任。

プロとして、どうなの?

同じ「建築にかかわる者」として
怒りを覚えました。

* * *

とはいえ、
そんな連中に怒っていても
何も解決しませんので、

確認申請ナシでできる範囲で、
やれるだけのことをやる

という条件が決まりました。

飲食店の場合は
建築の規制だけでなく

消防、保健所の手続き
いろいろとあります。

設計デザインはもちろんですが
こうした関係各所との協議も
重要な作業になります。

信頼できる建築士に任せる重要性

このように、
初めて独立開業する人
お店をつくる時には、

お店は小さくても
たくさんの作業が発生します。

デザインしかしない設計者に、
手続きをよく知らない施工者では、

つくったら後は知らないとばかり
最後まで面倒をみてくれない
可能性があります。

下手をすると、開業してから
抜き打ち検査で「違法」の指摘を受け
改修を求められたり、
閉店させられるリスクさえあります。

だからこそ、

いろいろな手続きを一手に引き受け
最初のコンセプトから
プランニング、施工者選び、
開業後のアドバイスまで、

一貫して面倒を見てくれる
建築士に依頼すること
いかに重要であるか
お判りいただけると思います。

ぜひ、信頼できる建築士をみつけて
じっくり相談してみてください。

今日も最後までお読みいただき
ありがとうございました!

 

とりあえず、相談してみませんか?こちらからどうぞ。

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